バカだ。

ホントに、あなたはバカだ。

そんでもって、わたしたちもバカだ。






fooooooolish eyes






「ねぇ、千石、亜久津仁は?」

「ああ、あのねー、屋上での喫煙とカラオケボックスでの飲酒がバレて停学中」

「あれ?あんたも一緒じゃなかったっけ?」

「ウン、オレ、酒飲んでなかったし」

「ちょっと、アンタ!!裏切り者!!」

「人聞き悪りーな!センセーがいいって言うんだもんよ」

「ひきょーもの!!」

「だってさー、ほら、オレ、今度テニスの関東大会行くべ? だからさぁ、先生も停学にはできなかったみたいなのよ。伴爺も口添えしてくれてさぁ」

「亜久津は見殺し?」

「しょーがねーじゃん?アイツ、先生殴っちゃったし」

「…あのバカ、そんな余計なことまでしたの?」

「ウン、あれはねー、伴爺でもかばいようがないよね」

「ほんっと、バカ…」



イキイソイデルノ―?

これから、何十年とある生を拒むように。



「あー、やっぱさ、わたしさっさと仁と子供作らなきゃ」

?これまた唐突な」

「あ!その前に、確実に収入が得られる仕事が得られる技術を身につけなきゃ」

…」

仁がいなくても、子供を育てて行けるように。

「なんか、ケナゲな決心してるみたいだね」

「ウン、だってさぁ、仁のバカ、あんまり未来のこと考えてないじゃん。つーか、全然考えてない。 わたしは仁のこと愛してて、その遺伝子は残したいワケよ。 だから、仁が死ぬ前には、仁の形見として子供が欲しいの。 でもさぁ、仁って全然甲斐性なしじゃん。一緒に子供育てるとか、子供のために働くとか、子供のためにお金を残すとか、絶対しなそうじゃん? だから、わたし、一人で子供を育てなきゃイケナイワケよ。 たーとーえー、仁が認知してくれなくても、子供は産むわよ?ただ、育てるには現実的に金が必要なわけで、 だから、そのために金を得られる職業につかなくちゃ…」

「んー!っ!!ナンテ、カワイインダッ!!」

「褒めても何もないよっ?」

「ウン!!かまわない」

「千石ぅ?」

「もし、がひとりで子供育てるんならオレと結婚してね」

「は?」

「オレも、一緒に亜久津の子供育てるから」

「それダメだよー、絶対に幼児虐待でさぁ、わたしと仁の子供、カウイソウ!!」

「んなことないよー、だって、亜久津の子供だよ?オレ、絶対に可愛がる!! オレと、と、亜久津の子供と、仲良くやれるって」

「ホントーに?」

「うんうん!!」

「それも悪くないね」

「だべ?」

「千石は仁のこと好き?」

「ウン!」

「わたしのこと、好き?」

「おお!」

「…わたしと仁と千石…3人で暮らすのもいいかもね」

「ソレって…いいかも!」

「わたしは仁としかやんないけどさぁ…。千石は、両刀でしょ?」

「ウン!」

(否定しろよ、この低能!!)

「あ!今、、失礼なこと思ったでしょ」

「あ、分かる?千石のこと、低能だって思った」

「バイと低能が何で結びつくわけさ」

「いや別に…」

「へへへ!オレ上手いよ」

「遠慮しとく、せいぜい亜久津と楽しんで」

「んだよー、亜久津がしてくんない時とかさぁ、代わりにやったげんのにー」

「我慢する、もしくはひとりでする」

「うひゃー!、さり気に大胆はつげーん!」

「何さ、男はみんなやってんだろーよ」

「そりゃそーだけどさぁ。もう!はイチオウ女の子なんだから、もうちょっと可愛らしくしないと亜久津に嫌われるよ」

「嫌われても押し倒す。襲って搾り取る!」

「ギャー!、サイテー!!」

「ほっとけー、わたしは仁を愛してるんだー!」

「オレも、オレもっ!亜久津ー、愛してるぜー!!」



「…お前ら…」



あーーーーー!!



「じーーーん!!」「亜久津ー!!」



「死ね!!」









仁は、私服だった。

「うわぁ!めちゃめちゃかっこいー、惚れ直すー」

「んだんだ!」

「ていうか、それで堂々と学校の中入ってきたわけ?」

「悪ィかよ?」

「ていうかぁ、亜久津、何しに来たの?」

「……」

「あーん!愛しの彼女に会いに来たのね!!」

「ちっがうよねー、愛しの清純くんに会いに来たんだよねー♪」

「んっとに、お前ら、バカ」



仁を真ん中に、わたしと千石は屋上のコンクリートの床に座る。

「あ、亜久津ー、そういえばねー、オレと、将来を誓い合った仲になったんだよ」

「ハァ?!」

「ちょっと!!誤解を招く言い方はよしてよね!違うのよ、仁。 それはねー、仁がいなくなった時の話でー」

「俺が何でいなくなんなきゃならねーんだよ」

「だって、仁、認知してくれないでしょ」

「ハァア?!認知って、何のハナシだよ?!」

「亜久津、おもしれっ!声が裏返ってる!!」

あ、千石殴られた。

「ちょっと待て…、俺とお前、いつヤった?」

「いや、まだだけど」

「うっそダーン!!あ、コレ太一のマネね♪マジ?、まだ亜久津とやってなかったの?」

「ウン」

「なんだよー、随分ハナシがぶっ飛んでんじゃん。やってもないのに、子供育てる話なんかしちゃってさー」

「えー!だって、わたし、仁のこと愛してるし、将来末長ーく一緒にいたいと思ってるわけなんだけど、 仁がそこんとこどう思ってるか全然わかんないし、そしたらひとりで生きていく道を選ばねばならない時もあるわけで…」

「…

「んー!強い!イイ女っ!!」

「だしょ、だしょ?でもねー、いつか別れる時が来ても、それまでは少しでも長く仁といたい…」

「くーー、泣かせるねぇ!」

「ん?仁、どうしたの?」

頭を抱える仁。

「んっとに、お前らには付き合いきれねぇ」

「んなこと言ってさ、オレたちに会いに来たくせに」

「そうだ、そうだ」

「そんじゃさぁ、これから、川原に行くべ?」

「川原で沈む夕日を眺めるの?」

「そうでーす!せいしゅーん!」

「青い春だー!」

「肉まん買ってくべ!」

「わたしカレーまんがいいなー」

「亜久津は何がいい?」

「いらねぇ」

「あー、仁はねぇ、あんまんだよ!基本に忠実に!甘党だし!!」

「んじゃー行くべー!!」

「おー!!」

「…ホントに行くのか」

「さ、亜久津も立って!」

千石とわたし、両脇から仁の腕を引っ張る。

「ウゼェ」

とか言いながら、立ち上がる仁は大きいから、わたしと千石は仁の腕に縋りついてるみたいになって…

「お前ら、ホントにウゼェんだよ!」

って、怒鳴られた。



「やーん!これいい感じィ!」

「ウン、マジ、いい感じ!!亜久津、両手に花っ!!」

仁が手を振り上げようとした瞬間に、わたしたちは逃げ出す。

「置いてくよー、仁!」

「亜久津ー、早くー!」



仁は、追いかけてくる。

絶対に。

今は。

いいじゃない、今だけでも。

いいじゃない、今だけ、バカになっても。



夕日のオレンジと、前を走る千石の頭のオレンジとが重なって、視界がオレンジに染まった時、仁がわたしの手を掴む。

「っとに、お前ら、バカだな」

そういう仁の声は、優しかった。






end.

モドル